当院の入り口近くに展示している絵をご覧になりましたでしょうか。タイトルは「いのち」。カラフルで、近くで見ると細かな模様が書き込まれていて、見ていると引き込まれるような絵です。その絵を描いた作者は、工藤修子さん。当院に通院されています。
工藤修子さん(以下、修子さん)に、主治医の工藤医師(以下、工藤)が絵画「いのち」のことや、絵を描き始めた小さいころのことなどを聞きました。
この連載は全3回でお送りします。今回は第3回/全3回です。
工藤 僕、美術のこと詳しくないんですけど、ジャンルで募集される作品とかないんですか。
修子さん テーマを設けている公募展とかあります。例えばコーヒーの絵でなんか集めてくださいというのはあるんですけど。自分でジャンルとかカテゴライズして考えてたことがなくて、強いて言うなら、使ってる画材で分けられるかなと思うんですけど。
工藤 道具でね。画材で分けるのが。
修子さん はい、そうですね。抽象画とかいうくくりになるんですよね。
工藤 僕のイメージだとそうなんですけど。 抽象画を描く人って、僕はわからないんですけど、抽象画を描いてるっていうイメージで描いているのか。それとも、今みたいに、頭の中に何かが降りてくるのか。どうなんでしょう?
修子さん 頭の中も抽象的ですね、私。たぶんそういう。そうですね。抽象的なイメージで描いてますね。
工藤 僕たちはこういうイメージが降りてくるっていう感覚が分からないもんね。 でも、描いている人同士でも、相手の絵を見たときに、どう感じるんですか。例えば、同じような抽象画展とかで。好きな画風とか、抽象画にもあるのかと思って。抽象画っていうくくりにしたら申し訳ないけど。
修子さん 見る側になったら、たぶん、観客として、一観客としてしか、その、情報は拾えないのかなと。その人の感受性、世界観、とか。タイトルとかなければわからないと思うし。
工藤 やっぱりそうなんだ。例えば、私、描かない人たちが、タイトルと絵の画風を見て「え?」と思うことがあると思うんですけど、描いてる方同士でも「え?」って思うんですか、やっぱり。
修子さん 思うものもありますし。なんかわかる、という感じで。なんかいいとか。
工藤 感性ですね。
修子さん たしかにありますね。
工藤 美術ってよくわからないんですけど、音楽だと誰々の影響を受けたとかあるじゃないですか。そういうのって、あるんですか。
修子さん 影響はありますね。画集とかからでもそうですし、お互いアーティスト同士で刺激しあってる部分もありますし。
工藤 例えばどんなものですか。僕が知っているわけではないんですけど、そういう名前が挙げられるような形で、例えばこの感じがいい、とかいらっしゃるんですか。
修子さん うーん。
工藤 それよりも、絵とか。描いてる人というよりも。
修子さん そう。…結構例として挙げろって言われると、困ってしまう。
工藤 それくらいの感じなんですね。
修子さん はい。
工藤 ありがとうございました。
【スタッフより】 修子さんに工藤医師がお話を伺いましたが、二人の様子から対等な関係性が感じられました。診察時は患者と主治医という関係ですが、今回は普段の関係性ではなく、人として対等な立場で絵について話しています。そのように対等な立場で、互いに尊重する関係性が、誰もが生きやすい社会につながるように感じました。
(終わり)
2024.5.3