帯状疱疹ワクチンの接種について
帯状疱疹とは
帯状疱疹の特徴
帯状疱疹は、時に痛みを伴う水泡が集簇して出現する疾患であり、主に小児期に感染する水ぼうそう(水痘) と同じウイルスが原因で発症します。子どものころに水ぼうそうにかかると、水痘・帯状疱疹ウイルスが体の中で長期間潜伏感染し、加齢やストレスなどで免疫力が低下して発症することがあります。50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人、85歳以上の半数が帯状疱疹を発症するといわれています。
50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、10~20%は3ヶ月以上痛みが残る
最も問題なのは、皮膚症状が治った後も、3か月以上痛みが残る帯状疱疹後神経痛(PHN)になる可能性があることです。PHNは、感染した神経支配領域に強い持続性のジリジリ、ビリビリした刺すようなあるいは焼けるような痛みを生じるのが特徴です。50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、10~20%がPHNになるといわれています。さらに、加齢とともにPHNになる確率が高くなります。
早めの病院受診が重要
また、帯状疱疹は頭部から顔面に症状が現れることもあり、角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などの合併症を引き起こすことがあり、重症化すると視力低下や失明に至ることがあります。さらに、顔面神経麻痺や耳の神経の障害から、難聴、耳鳴り、めまいなどが生じることもあります。これらの合併症を少なくするために最も大切なことは、できるだけ早く治療を行うことであり、早めの病院受診が重要です。
そして、これらの帯状疱疹の発症を予防する目的で、50歳以上の方を対象に、帯状疱疹ワクチンがあり、国内では生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。
日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスの抗体を有しています。
多くの人が子どもの時に水ぼうそうに感染し、感染したウイルスは、水ぼうそうが治った後も、普段は免疫力によってウイルスの活動は抑えられていますが、症状を出さない状態で脊髄神経や脳神経の神経節という部分に潜み続けています。獲得した免疫は年齢とともに弱まり、帯状疱疹を発症してしまうリスクが高まります。また、一度、帯状疱疹に感染した人でも、加齢やガンや糖尿病などの病気にかかったりすることによって免疫力が低下し、ウイルスが再び活性化して症状が出る可能性があります。つまり、50歳以上の成人では誰もが帯状疱疹を発症する可能性があり、一度帯状疱疹を発症した人でも5年経過したら、ワクチン接種が望ましいと言われています。
接種にあたって当院医師にご相談下さい
免疫を強化して発症を予防するというのが帯状疱疹のワクチン接種の目的です。しかし、ワクチンは帯状疱疹発症を完全に防げるものではなく、また、接種ができない人、あるいは、注意を必要とする人もいますので、接種にあたっては医師とご相談ください。
帯状疱疹ワクチン予約相談
*ワクチンは常備していませんので、接種にはあらかじめの予約が必要です。
*当院初診の方は、皮膚科受付をしてください。
*かかりつけの患者さんは、まずは主治医にご相談ください。
帯状疱疹ワクチンについて
製造メーカー | 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
乾燥組み換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
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種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
帯状疱疹に対する薬事承認時期 | 2016年3月 | 2018年3月 |
対象年齢 | 50歳以上 | 50歳以上 |
接種方法 | 皮下注射 | 筋肉注射 |
接種回数 | 1回のみ | 2回必要(2か月間隔) |
接種費用 | 7000円 | 22000円×2回 |
発症予防効果 | 69.8%(50~59歳) 61.1%(60歳以上) |
97.2% (50歳以上) 89.8% (70歳以上) |
PHN発症 予防効果 |
66.5%(60歳以上) | 100% (50歳以上) 85.5% (70歳以上) |
効果持続性 | 5年程度 | 9年以上(現時点) |
併用禁忌 | ステロイド、免疫抑制剤 抗がん剤を使用中の方 |
左記対象も使用可能 |
利点 | 費用が安い 1回接種でよい |
効果、持続性が高い 免疫抑制系の薬剤使用者も 接種可能 |
欠点 | 効果、持続性が低め 免疫抑制系の薬剤使用者は接種不可 |
費用が高い 2回接種必要 接種部位の副反応が多め |
参照:
国際共同第Ⅲ相臨床試験:ZOSTER-006試験、ZOSTER-022試験
MN Oxman et al.: N Engl J Med.352(22):2271-84,2005
厚生労働省:厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)資料
厚生労働省:ワクチン評価に関する小委員会(阪大微生物病研究会) 2016年6月22日
国立感染症研究所:帯状疱疹ファクトシート 2017年2月10日
Shikari K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx 007, 2017
Hata A. et al.: Infection. 39(6), 537-544, 2011
国立感染症研究所:病原微生物検出情報(IASR) 「水痘抗体保有状況」 など